北海道新聞 夕刊 地域情報版 「みなみ風」 コラム欄 立待岬
2014年(平成26年)08月15日 第5027号 掲載
来函した留学生と接する機会が増え、自分に語学力があればとつくづく感じる。留学生が日本語で話してくれる場面が多く、ほっとするが、茶の専門用語はこちらが説明しなければならない。翻訳ソフトの使い方をマスターすべく勉強中だ。
スマートフォンなど通信機器を介したやりとりも増え、海外のように、どこでも気軽にインターネットにつなげられる無料Wi-Fi環境が、函館圏にも必要になったと実感する。
もちろん、人と人の心をつなぐのは、最先端のデジタル技術だけではない。当社が函館市末広町にもつ茶室「御茶ノ倉」には、利休居士15代家元の鵬雲斎大宗匠が特別攻撃隊の戦友と七飯町で再会したときに使った畳があり、留学生との交流茶会で使用している。
戦後この再会の重さは死んだおやじから聞いた。
大宗匠は、特攻隊の戦友が「自分たちの死が日本の平和の礎になれば」と沖縄へ飛び立つ姿を見送り続けるうちに終戦を迎えた。だからこそ、今の平和は戦友たちの犠牲の上にあり、残された自分には今生きるという役目があることを忘れたことがない。同志社大学の学生時代、大宗匠と深い友情に結ばれたおやじだからこそ、そうした心の内を知り得たようだ。
来年は終戦70年。多くの戦友を失った大宗匠の悲しみと平和への願いを、茶の緑をもって留学生たちにも伝えたい。アナログなお茶にも人々の心をつなぐ力があると私は思う。
登録日 : 2016-02-07 | 最終更新日 : 2016-11-15 | カテゴリ: 社長のコラム, 道新「みなみ風」