函館ルール

北海道新聞 夕刊 地域情報版   「みなみ風」 コラム欄 立待岬
2017年(平成29年) 4月17日  掲載

 茶の湯を理解する資料に「日本教会史」があり。16~17世紀の宣教師ロドリゲスの解釈による日本の文化論として研究する人が多い。

 堺市博物館館長だった角山栄氏が、この資料で注目すべき点として。武将でさえも小屋(茶室)に入る際は武器、武具一切の持ち込みを禁じた「法のよらない規則」を定めたこと、茶の湯とは「主人が客人の目の前で茶をたてるという無毒証明行為で、毒が入っていない茶を全員で回し飲む」ことを挙げている。人間不信の戦国の世で茶を喫することは、信頼を固める役目を持っていたのである。

 国際貿易港であった堺の「文化力」を知ることは、函館のために役立つと勝手に思っている。函館が本物の国際海洋都市を目指すならば、世界一の良港、安全な港が求められる。入港する船舶にも安全な船とそうでない船もあるが、初めから入港拒否ではなく、海域に入ったら「函館ルール」に従うように求めれば良い。

 文化、宗教、思想、言語等が異なっても絶対的な調和を保ち、指定海域では戦うことなく「平和特区」として世界が認める港になれば、多くの船舶は安心して入港するだろう。これは理想中の理想だが、世界に向け灯台のように光を発し続ける函館であってほしい。そこで人々の心を結ぶ手段の一つとして、茶の湯が役立つと私は信じている。

 最後に10年間の「立待岬」執筆の役目を完了するにあたり、心より感謝をして万年筆を置きます。まだどこかでお目に掛かりましょう。

登録日 : 2017-04-18  | 最終更新日 : 2017-10-19 | カテゴリ: 社長のコラム, 道新「みなみ風」